EMNLP2017参加+発表報告,あるいは逃避行(後半)
- 2017/09/18
- 22:29
EMNLP2017参加+発表報告後半です!前半はこちらです.


9/10(日)
本会議2日目.発表熱が冷めやらず,6時に起床.しかし,自分の発表が終わったことには間違いないので,悠然とした面持ちで発表を聞く.昨日までの緊張は何だったのか,というくらい.発表の前後で安定したテンションを維持できる人間になりたい.
ポスターを見たり発表を聞いたりする.ニューラルネットのモデルと確率モデルとをうまく組み合わせた手法の話や,パラフレーズ獲得の手法として,パラレルコーパスを利用する手法がある中で,既存のパラレルコーパスには限られたパラフレーズしか獲得できない問題があって,どういう戦略でパラレルコーパスを拡張するか,という話が面白かった.
この日も会場では昼食が出なかったので,昼食探しの小旅行に出る.Trip Advisorで調べた情報は7割くらい当てになるけど,残りの3割はやっぱり現場まで行って,お客さんが入っているかとか,怪しげな外観ではないかとか,様子を見る必要があって,言語処理の研究もそんな感じなのでは,とぼんやりと思う.(適当)
午後は最近何かと気になるMachine Comprehensionの発表を聴く.Adversarial Examples for Evaluating Reading Comprehension Systemsという発表が興味深かった.質問応答システムに対して,既存の正解データと敵対的な情報をデータに加えて学習したり評価したりしたらどうなるかというような話.
夜は,ある意味学会のメインイベントでもあるSocial Event.どうやら屋外で開催するらしい.ライブスケジュールのような看板が掲げられ,リハーサルのような音響が流れ,ライブステージのようなものがセッティングされているのを目の当たりにして,ライブイベントがあるのかなとちょっと期待する.
この日のすべてのセッションが終わった所で,以前論文を読んでぜひ一度お話してみたいと思っていた方にお会いできて,テンションが上がる.会場の係に追い立てられるようにして,Social Eventの会場(外)に向かう.
時刻は18時.まだ日は暮れていなかったが,恐ろしく寒かった.気づけば周囲もウルトラライトダウンやらマフラーやら冬の装い.とりあえずタコスとタイカレーを配給している屋台の列に並ぶが,寒さを忘れられるなんてことはなく.こんな寒い所にこれから4時間もいないといけないなんて,やっぱりこの分野ってなかなかハードじゃないと生き残れないんだなーと思う(何でも研究と結びつけてしまう.笑)Mark Steedman先生と再びお話しできて,ちゃっかり写真も撮れた(ミーハーですみません)のは良かった.
少し期待していたライブはDJ(一人で固定かと思えば,ちょいちょい入れ替わっていた.この入れ替わりがライブスケジュールに記載されていたようだ.)と,謎のお姉さん3人組の歌?カラオケ?で,テンションが下がる.しかも音楽が70-80年代の割に,ちょっと微妙なセレクションで,実は一度DJをやってみたいという密かな野望を持っていた私としては「ここは代わってセレクションさせていただきたい…!」とやきもきしてしまった.
寒さでテンションがどんどん降下して,人もばらばらといなくなっていって,私も今並んでいるタイカレーを少し食べたらすぐ帰るんだと思っていた中,The Salsoul OrchestraのRun Awayが流れた.Nuyorican SoulのRun Awayの元ネタの曲だ.
小さい頃からドライブでよくかかっていた曲で,曲調からして,いろいろあるけど頑張ろうって曲だろうと,小さい頃にずっと思い込んでいた.でも中学になって,曲名が「逃げる」という意味で,うまくいかない恋愛の曲だと知った時は,愕然とした.でも改めて歌詞を聴くと,逃げるというネガティブに捉えがちな行動も,時には自分を守るための戦略の一つになりえる行動であって,この曲はそれを後押ししてくれる曲なのかもしれないとも思った.周囲を眺めると,私と同じくらいの研究者が口ずさんでいて,なんだか嬉しくなった.やっぱり今でもこの曲は自分にとって勇気づけるための曲で,とても好きな曲だ.
この曲のおかげでなんとかテンションを維持したが,21時には寒さに限界を感じ始め,帰ることに.明日は最終日で,私の今回のSocializeはここまでか.とちょっと凹んだ.
9/11 (月)
本会議3日目.EMNLP最終日.
あっという間に最終日となった.午前中の口頭発表やポスターの発表を聞く.全然分野外かもしれないと思いつつ発表を聞き始めると,意外とそうでもなく,共通のTipsを拾えることもしばしばあり,変な先入観は持たないで,聞ける限り色んな発表をちゃんと聞いた方が良いなと思う.別の言い方で言えば,絵を見ていて,「こんな絵,私でも描けそう」と言うことは簡単だけど,そうではなく,わからないなりにも細部を見て,一緒に絵を見ている人と同じ視線で語れるような人になりたいと思う.
ランチの時間.期せずして,いや実は内心期待して,一度お話ししたかった先生方にお会いすることができた.昼食をご一緒することになり,Socializeに成功.しかしこういう時に限って体調がイマイチだったりするのが私で,緊張もあいまって,ビーツのサラダなどという変なメニューを頼んでしまった.でも各研究室の最近の取り組みなど色々なお話が聞けて,Socializeとしては大成功.ありがとうございました.
午後は共著者のP先生の発表を聞く.スピーカーから流れるP先生の声を聴きながら,少し日本を思い出す.いや,そろそろ,日本を思い出さねばならない.
また近いうち,私はこの学会で発表するぞ,何なら音楽セレクション担当としても参加したい←,という決意あらたに,学会会場を後にする.まだ会場と食事でしか味わっていないコペン感をさらに味わうために,バスに乗ることにする.道が工事中なのもあり,バス停を見つけるのに少し苦労する.何とかバスに乗り込んだが,予定と違うバス停で降りる.← 偶然遭遇した教会にふらりと入ると,予想を遥かに上回るパワースポット的雰囲気で,思わず今後の博士課程の平和,更には,私の研究人生の平和を祈念した.
教会を後にし,どこだか名前は忘れてしまったが,コペンハーゲンのショッピングのメインストリートらしき所を歩いた.改めて感じる異国感.時おり,自分が本当にここにいるのか自信がなくなる時があって,自分の影がちゃんとあることを何度か確認した.
夕食は,ちょっと宇宙船に乗って地球でも眺めつつ,宇宙食セレクションを片っ端から食べてみようという感じだった.今回のコペンハーゲンの旅のフィナーレを飾る夕食にしては,ちょっとスリリング過ぎる感じで,このまま宇宙から戻れなくなってしまうのではないかと思う瞬間があった.とはいえ,これが初日や発表の前日にあってもちょっと戸惑うので,やっぱり最終日らしい食事だったのではないかと思う.
気がつけば日が暮れていた.店内は少しずつ客も増えてきていて,ポロシャツ姿で小慣れて食事する者もいた.近所の常連客だろうか.そうだよね,宇宙食を提供する店といっても飲食店であることに変わりはないのだから,近所の常連客もいるのだ,と思う.世界は広い.今振り返ると,窓の外で数匹の蛾が戯れていたのが印象に残っている.蛾の戯れを眺めながら,普段の我々も,別の次元ではこんな風に見えているのかもしれないと思った.
9/12 (火)
コペンハーゲン最終日.最終日も朝食をしっかり取ってから,チェックアウトする.今更ながら,ホテルの朝食はとても美味しかった.ここまで何とか体調を崩さずやっていけたのは,この朝食があったからかもしれない.
コペンハーゲン空港で不審物が持ち込まれたとかいうトラブルがあるという情報を得る.その影響で,電車のダイヤも狂っているという情報も得て,タクシーで空港まで向かう.
通り雨が降っていた.運転手のおじちゃんはずっと電話をしながら,大雨の中を結構なスピードで走っていた.こういう所でも,日本と海外とのサービスの違いを感じさせられる.
空港に着き,荷物検査を終え,有り余っているようで有限な時間の中で,買いそびれたお土産を買う.
搭乗前,同じ便の日本人研究者の方々と期せずしてSocializeできて良かった.皆様,日本に帰ってからもどうぞよろしくお願いします.
いざ搭乗.コペンハーゲンが遠くなるのを感じながら,無意識と意識との間をさまよう.無意識の中にいたはずなのに妙に鮮明な記憶と,意識があったはずなのにおぼろげな記憶とが交差する.こんな私だけど,まだまだ研究者として戦っていきたいという新たな決意をぼんやりと抱きながら,無意識と意識との境界は,空にあるのかもしれないと思った.
東大生ランキングに参加しています。これからもよろしくお願いします!




9/10(日)
本会議2日目.発表熱が冷めやらず,6時に起床.しかし,自分の発表が終わったことには間違いないので,悠然とした面持ちで発表を聞く.昨日までの緊張は何だったのか,というくらい.発表の前後で安定したテンションを維持できる人間になりたい.
ポスターを見たり発表を聞いたりする.ニューラルネットのモデルと確率モデルとをうまく組み合わせた手法の話や,パラフレーズ獲得の手法として,パラレルコーパスを利用する手法がある中で,既存のパラレルコーパスには限られたパラフレーズしか獲得できない問題があって,どういう戦略でパラレルコーパスを拡張するか,という話が面白かった.
この日も会場では昼食が出なかったので,昼食探しの小旅行に出る.Trip Advisorで調べた情報は7割くらい当てになるけど,残りの3割はやっぱり現場まで行って,お客さんが入っているかとか,怪しげな外観ではないかとか,様子を見る必要があって,言語処理の研究もそんな感じなのでは,とぼんやりと思う.(適当)
午後は最近何かと気になるMachine Comprehensionの発表を聴く.Adversarial Examples for Evaluating Reading Comprehension Systemsという発表が興味深かった.質問応答システムに対して,既存の正解データと敵対的な情報をデータに加えて学習したり評価したりしたらどうなるかというような話.
夜は,ある意味学会のメインイベントでもあるSocial Event.どうやら屋外で開催するらしい.ライブスケジュールのような看板が掲げられ,リハーサルのような音響が流れ,ライブステージのようなものがセッティングされているのを目の当たりにして,ライブイベントがあるのかなとちょっと期待する.
この日のすべてのセッションが終わった所で,以前論文を読んでぜひ一度お話してみたいと思っていた方にお会いできて,テンションが上がる.会場の係に追い立てられるようにして,Social Eventの会場(外)に向かう.
時刻は18時.まだ日は暮れていなかったが,恐ろしく寒かった.気づけば周囲もウルトラライトダウンやらマフラーやら冬の装い.とりあえずタコスとタイカレーを配給している屋台の列に並ぶが,寒さを忘れられるなんてことはなく.こんな寒い所にこれから4時間もいないといけないなんて,やっぱりこの分野ってなかなかハードじゃないと生き残れないんだなーと思う(何でも研究と結びつけてしまう.笑)Mark Steedman先生と再びお話しできて,ちゃっかり写真も撮れた(ミーハーですみません)のは良かった.
少し期待していたライブはDJ(一人で固定かと思えば,ちょいちょい入れ替わっていた.この入れ替わりがライブスケジュールに記載されていたようだ.)と,謎のお姉さん3人組の歌?カラオケ?で,テンションが下がる.しかも音楽が70-80年代の割に,ちょっと微妙なセレクションで,実は一度DJをやってみたいという密かな野望を持っていた私としては「ここは代わってセレクションさせていただきたい…!」とやきもきしてしまった.
寒さでテンションがどんどん降下して,人もばらばらといなくなっていって,私も今並んでいるタイカレーを少し食べたらすぐ帰るんだと思っていた中,The Salsoul OrchestraのRun Awayが流れた.Nuyorican SoulのRun Awayの元ネタの曲だ.
小さい頃からドライブでよくかかっていた曲で,曲調からして,いろいろあるけど頑張ろうって曲だろうと,小さい頃にずっと思い込んでいた.でも中学になって,曲名が「逃げる」という意味で,うまくいかない恋愛の曲だと知った時は,愕然とした.でも改めて歌詞を聴くと,逃げるというネガティブに捉えがちな行動も,時には自分を守るための戦略の一つになりえる行動であって,この曲はそれを後押ししてくれる曲なのかもしれないとも思った.周囲を眺めると,私と同じくらいの研究者が口ずさんでいて,なんだか嬉しくなった.やっぱり今でもこの曲は自分にとって勇気づけるための曲で,とても好きな曲だ.
この曲のおかげでなんとかテンションを維持したが,21時には寒さに限界を感じ始め,帰ることに.明日は最終日で,私の今回のSocializeはここまでか.とちょっと凹んだ.
9/11 (月)
本会議3日目.EMNLP最終日.
あっという間に最終日となった.午前中の口頭発表やポスターの発表を聞く.全然分野外かもしれないと思いつつ発表を聞き始めると,意外とそうでもなく,共通のTipsを拾えることもしばしばあり,変な先入観は持たないで,聞ける限り色んな発表をちゃんと聞いた方が良いなと思う.別の言い方で言えば,絵を見ていて,「こんな絵,私でも描けそう」と言うことは簡単だけど,そうではなく,わからないなりにも細部を見て,一緒に絵を見ている人と同じ視線で語れるような人になりたいと思う.
ランチの時間.期せずして,いや実は内心期待して,一度お話ししたかった先生方にお会いすることができた.昼食をご一緒することになり,Socializeに成功.しかしこういう時に限って体調がイマイチだったりするのが私で,緊張もあいまって,ビーツのサラダなどという変なメニューを頼んでしまった.でも各研究室の最近の取り組みなど色々なお話が聞けて,Socializeとしては大成功.ありがとうございました.
午後は共著者のP先生の発表を聞く.スピーカーから流れるP先生の声を聴きながら,少し日本を思い出す.いや,そろそろ,日本を思い出さねばならない.
また近いうち,私はこの学会で発表するぞ,何なら音楽セレクション担当としても参加したい←,という決意あらたに,学会会場を後にする.まだ会場と食事でしか味わっていないコペン感をさらに味わうために,バスに乗ることにする.道が工事中なのもあり,バス停を見つけるのに少し苦労する.何とかバスに乗り込んだが,予定と違うバス停で降りる.← 偶然遭遇した教会にふらりと入ると,予想を遥かに上回るパワースポット的雰囲気で,思わず今後の博士課程の平和,更には,私の研究人生の平和を祈念した.
教会を後にし,どこだか名前は忘れてしまったが,コペンハーゲンのショッピングのメインストリートらしき所を歩いた.改めて感じる異国感.時おり,自分が本当にここにいるのか自信がなくなる時があって,自分の影がちゃんとあることを何度か確認した.
夕食は,ちょっと宇宙船に乗って地球でも眺めつつ,宇宙食セレクションを片っ端から食べてみようという感じだった.今回のコペンハーゲンの旅のフィナーレを飾る夕食にしては,ちょっとスリリング過ぎる感じで,このまま宇宙から戻れなくなってしまうのではないかと思う瞬間があった.とはいえ,これが初日や発表の前日にあってもちょっと戸惑うので,やっぱり最終日らしい食事だったのではないかと思う.
気がつけば日が暮れていた.店内は少しずつ客も増えてきていて,ポロシャツ姿で小慣れて食事する者もいた.近所の常連客だろうか.そうだよね,宇宙食を提供する店といっても飲食店であることに変わりはないのだから,近所の常連客もいるのだ,と思う.世界は広い.今振り返ると,窓の外で数匹の蛾が戯れていたのが印象に残っている.蛾の戯れを眺めながら,普段の我々も,別の次元ではこんな風に見えているのかもしれないと思った.
9/12 (火)
コペンハーゲン最終日.最終日も朝食をしっかり取ってから,チェックアウトする.今更ながら,ホテルの朝食はとても美味しかった.ここまで何とか体調を崩さずやっていけたのは,この朝食があったからかもしれない.
コペンハーゲン空港で不審物が持ち込まれたとかいうトラブルがあるという情報を得る.その影響で,電車のダイヤも狂っているという情報も得て,タクシーで空港まで向かう.
通り雨が降っていた.運転手のおじちゃんはずっと電話をしながら,大雨の中を結構なスピードで走っていた.こういう所でも,日本と海外とのサービスの違いを感じさせられる.
空港に着き,荷物検査を終え,有り余っているようで有限な時間の中で,買いそびれたお土産を買う.
搭乗前,同じ便の日本人研究者の方々と期せずしてSocializeできて良かった.皆様,日本に帰ってからもどうぞよろしくお願いします.
いざ搭乗.コペンハーゲンが遠くなるのを感じながら,無意識と意識との間をさまよう.無意識の中にいたはずなのに妙に鮮明な記憶と,意識があったはずなのにおぼろげな記憶とが交差する.こんな私だけど,まだまだ研究者として戦っていきたいという新たな決意をぼんやりと抱きながら,無意識と意識との境界は,空にあるのかもしれないと思った.
東大生ランキングに参加しています。これからもよろしくお願いします!
