
ノックの音がした。
ノックの音がすると、私はたいてい慌ててしまう。
トイレの時のノックといい、面接官が入る時のノックといい、
急かされているような気がしてしまうのだ。
しかし、慌てると余計に動作がもたついてしまう。
そうこうしているうちに、再び、ノックの音がした。
「はい」
私は部屋着から着替え、やっとの思いでドアの向こうに返答した。
「お届け物です」
私はがくっとした。なんだお届け物かい。
それなら着替える必要もなかったか。慌てて損をした。
私はドアを開け、配達人からクール宅急便を受け取った。
うわ、ずっしりと重い。何これ。
差出人を見たが、差出人不明だった。
伝票と、「生ものですので、早めにお召し上がり下さい」
というシールだけが貼られていた。
配達人はハンコをもらうと
「ありがとうございましたー」
と言いながらそそくさと立ち去った。
しかし、この重さは何が入っているのだろう。
差出人不明というのも気になる。実家の母がうっかりして
差出人を書かなかったのだろうか。
しかも生ものということは、蟹か何か食べ物だろうか。
そんなことを考えながらクール宅急便を開けようとすると、
側面に血のようなものが付いていた。
私は動揺して思わずクール宅急便を落とした。
なんで?血?
このクール宅急便の中には何が入っているの?
生もの、尋常ではない重さ、血、差出人不明…
色々な想像が駆け巡る。
どうしよう。中身は気になるが、開けるのも嫌だし、
このままここに置いておきたくもない。
想像がどんどん膨らみ、怖くなった私は、
このクール宅急便を他の人にお歳暮の余りとか何とか言って、
そのまま渡してしまうことを思いついた。
するとまた、ノックの音がした。
私は急いで返答した。
「はい」
ドアが開いた。
(つづく)
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