私は一人、広いショッピングモールでウインドーショッピングをしていた。
休日なのか、ショッピングモールは賑やかで、
その中に私の知っている人はきっと1人もいなくて、
当たり前だけれど、世の中には私の知らない人がまだまだたくさんいる。
そう思いながら、安物のアクセサリーがごちゃごちゃ並んでいる所を、
何を探すのでもなく歩いていたが、
前方に1人だけ、見覚えのある顔があった。
大きなスーツケースを窮屈そうに持ち運びながらも、
一人淡々とショッピングモールを歩くその姿に、
私は少し懐かしさと共感を覚えた。
あれはもしかして、M子ではないか?
私と目が合うと、M子似の彼女は私に近づき、
お店を探しているんです、案内してもらえますか、と尋ねてきた。
なぜインフォメーションに尋ねず、私に尋ねるのだろうと思いつつ、
私は何故かそのお店の場所を覚えていたので、
一緒にそのお店まで歩き、案内することにした。
高いヒールに花柄のミニワンピースで易々と歩く彼女の姿は、
ショッピングモールの喧騒の中でも目立っていた。
その店もまた、安物のアクセサリーばかりが並んでいたが、M子似の彼女は
たいそう嬉々としてアクセサリーをじゃらじゃらとつかんでは、
これかわいくないですか、と私に話しかけてきた。
安物のアクセサリーが大好きな所までM子にそっくりであった。
やはり彼女はM子なのだろうか?
しかし、彼女は私を見知っている様子ではない。
栗色の巻髪という髪型はM子と違うが、よくよく思い出すと、
初めてM子と出会った時のM子の髪型も栗色の巻髪だったかもしれない……。
そこで目が覚めた。
ここ最近、自分の夢に、しばらく会っていない人ばかりが、全くの別人として登場する。
今の夢には学部時代に同じサークルだった女の子が出てきた。
全く謎の夢だわ、と呆れるのと同時に、
自分の交友関係の希薄さを、改めて思い知らされるのであった。
そう、私は集中治療室にいたのだった。
こんな緊迫した環境の中でもうたた寝をしていた自分が無神経に思えた。
また、夢の中の方が、よっぽど現実的であるようにも。
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